フォトグラム、作品について

 フォトグラムとは、ものを印画紙の上に乗せ、光をあててシルエットを感光させるものです。坂田峰夫のフォトグラムは直接的な手法によることは共通ですが、厳密に言えばそれとは少し違うものです。
 カメラはフィルムにネガ像を撮影し、それを印画紙に焼き付けるとポジ像=プリントとして再現されます。またネガとポジはフィルム上で既に対になっていることからも、写真の構造はネガとポジとが常に対になっています。フォトグラムのように直接的な表現では、当たり前にやり過ごすこのことが特に強く意識されます。
 ものを太陽にかざしてみると、ものの内側や裏側が透けて見えたりシルエットが強調されるように見えます。内側と外側、表と裏、光と影、美と醜、男と女、、互いに補いあい強調しあう、、、同時に相反する2つのことが、一体となってここにも存在ことは面白いことだと思います。そしてネガとポジの狭間にあるイメージは現実との間にも隙間をつくってくれます。
 草花を中心に作品を制作しているのは自然のものは誤魔化せないということ、フォトグラム制作以前のテーマであった「死」や「供養」のモチーフとしての花、個人的な趣味からです。花や自然と対峙するには真摯にすることが大切であることに気付かされます。
 作品制作のなかで、熱や光、時間によって刻々と変化する植物を捉えるには、見えない暗闇に一気にイメージを定着させるようで、瞬間を捉える写真のようでいて、水墨画のような感覚があります。
 また、この作品を制作していて面白いのは予測が外れることです。これはデジタル写真では実感し難いアナログの面白さといえます。